『現代に舞い降りた天使たち』第4弾[後編]
はい。こちら「光の中の天使たち」後編です。
さすがに長いですね……。
1つにまとめるには、無理がありました^^;
システム上と言うより、読む方に……。
さて、前回意味深な終わり方をしてしまったような気がしますが……。
コレは、その翌日から話がスタートします。
いつもと違うパンドラに、どういうことかよく解らないままのシヴァ。
問いただせばいいと言われたけれど、肝心のユダはまだ帰ってこない――そんな思いで悶々としていたシヴァたんは、当然のごとくよく眠れないまま朝を迎えてしまいました。
そんなシヴァたんがとった行動とは?
あまりにもベタな展開に解り易過ぎるかもしれませんが(苦笑)
まぁ、あまり難しい事ばかりでも、読むのが大変ですからね^^
ここらでひとつ……(苦笑)
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◆光の中の天使たち[後編]
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明朝。朝も早い時間だった。
まだ朝靄さえ晴れ切っていなさそうな、そんな朝。
珍しく早起きして外に出てくる人影があった。
どう見ても、それはこっそりと、誰にも見られないようにしているようにしかみえなくて。
別に、こんな時間にそうそう外に出る人なんていないのだから、そこまで隠れなくてもよいだろうに……。
そう思えてしまうほどに、その人は隠れるようにして通り近くまでやってきた。
しばらくして、通りの方から聞こえた、小さな車のブレーキ音。
その音にはっとして、通りの方を凝視している。
敷地に車を付け、ややしばらくして、降りてくる人影があった。
どうやら、タクシーの類ではない。
立派な黒塗りの……どこかの大企業の社長とかが乗っているような、そんな外国産の重厚な車。
それは、夕べ乗っていった車と同じもので……。
まさかずっと車に乗っていたわけではないだろうが、乗って行ったのと帰って来たのが同じ車と言うのはなんか変な感じだった。
その車から降りてきた彼は、少し眠たそうにしてはいたけれど、いつもと同じ顔。
どこも傷とかはついてないみたいだし。
きっと、アイツの思い過ごしだったんだよ。
だって、なんともないじゃないか。
いつもと変わらない。
「ユ……」
近づこうとした瞬間、車から顔を出す一人の男の人が見えた。
漆黒の長い髪。切れ長の瞳。
見るからに背の高そうな痩身の体躯。
なぜか感じる威圧感。
そして……背筋がぞくりとした。
「お疲れ様。また、頼むよ」
低い声が少し聞き取りにくい。
「いい加減に、こんなの回さないでくださいよ。他の連中にやらせれば良いじゃないですか」
ため息をつきながら肩を竦め、釘を刺すように言う。
「先方がどうしてもってね。まぁ、頻繁に受けるつもりはないから。堪えてやってくれ」
その言葉に、再びため息をついていた。
「本当ですね? 頻繁に受けないって……」
「そりゃあ、君に何かあったら困るのはこっちだからね」
「……その言葉、信じますよ」
真剣に言うその言葉に、相手はくすりと笑う。
「あぁ。信じてくれ」
車の中の人が、声をかける。
「解った。じゃあ、そう言うことだ。今日はゆっくり休んでくれたまえ」
「はい。お疲れ様でした。おやすみなさい」
「あぁ、それじゃ」
片手を挙げると、車が音もなく発車した。
それを軽く礼をしながら、車が曲がるのを見送っている。
いったい誰なんだろう?
あれが、昨日言ってた人なのかな?
心臓が早鐘のように、ドキドキしている。
どう見ても、知り合いみたいだ。
しかも、割と親しいような間柄。
いったいどんな仕事を?
悶々と考えていると、踵を返してこちらへ来ようとしていた。
あんなに会いたかったのに、なぜか近くに来ようとしてるのに、その前に出ることが出来なかった。
昨日、アイツがあんなこと言ってたせい。
夕べ、アイツがあんな顔をしたせい。
そう思おうとしたけど……。
気付いた。
さっきの……畏怖さえ感じるあの人を見たせいだって。
それで、体が竦んじゃっている。
会いたくてたまらない人を目の前にしていながら、近寄れない……。
なんて事だろう。
とても、悔しかった。
自分の意気地のなさに。
自分の運命の悪さに……。
「よぉ、ユダ。今帰りか?」
どこから現れたのか、目の前にはゴウがいた。
ここ久しく、こんな時間には会ったことがなかったのだが……。
それもそうか。
ゴウはコンビニの深夜担当をしていると聞いた。
おれも深夜の仕事だが、コンビニよりは早い帰宅だから、ゴウが帰ってくる頃には既に寝ていることが多い。
なのに、今日はどうして?
そんな疑問もありつつ、口から突いて出た言葉は……。
「ゴウ!? 相変わらずおまえは早起きだな」
「まぁな。昨日は休みだったから早く寝てしまったし。ところで、さっきのは……」
もう何もなくなった通りに、ゴウは目を向ける。
「見てたのか?」
「覗くつもりはなかったけどな」
悪びれることなくゴウは笑った。
まぁ、別に覗かれていたとしても、悪い事をしているわけではないのだから、気に病むことはないのだが。
「ウチのだよ」
それだけで通じるものがある。
長年の付き合いは、そう言う部分が楽だ。
「ユダのとこの? って言うと、ルシファーか?」
「あぁ、そうだ。相変わらず――だったろう?」
「まぁな……」
ウチの? ウチのって……どういう意味なんだろう?
ルシファーって言えば、かなりの大企業の社長って聞いたことがあるけど……。
そんな人とユダがどうして……知り合いなんだろう?
するつもりはなくても、覗いている身で、抱えてしまう疑問は増すばかり。
そんな気配を感じたのだろう、くすりとゴウは笑いを漏らしていた。
「どうした? ゴウ」
訝しげに問うと、堪え切れなさそうに笑いながら、ゴウは自分の後ろの木陰の辺りを親指で指差した。
「イヤ、なに。凄く悶々としているヤツが一人いるなと」
「なんだって?」
全然気付かなかった。
誰かがいたと言うのか?
何故、何のために?
そんな覗きのような真似を?
ユダの疑問なぞお構いなしに、ゴウはくるりとそちらに顔を向け、言い放った。
「ほら、出てこいよ。シヴァ」
名指しで言われては出ないわけには行かなかったのだろう。
渋々姿を現したのは、しばらく振りに見るシヴァの姿だった。
「シヴァ!? いつからそこに?」
「あ……あの……」
怒られたと思ったのか、目線を逸らし所在なげにうつむいている。
「まぁ、シヴァもおれと同じなんだろうよ。たまたま朝早く出てきたら、おまえと出くわしたってヤツだな。だろ? シヴァ」
「う、うん……。まぁ、そんなとこ」
「それで? 何故悶々としていることに繋がるんだ?」
「いや、あの……」
何も言えなくなっているシヴァに助け舟を出すかのようにゴウが説明する。
「大方、誰かに、ルシファーの逸話でも聞いたんだろう。だから心配になった――そんなところじゃないのか?」
何でも見透かしているように、ゴウの色違いの瞳が静かにシヴァを見ていた。
「う、うん……。あの、実はね」
何か言われるのも面倒だと思い、簡単に事実だけを述べる。
「心配することはない。彼は、そんな人じゃあない」
安心させるつもりで言ったのだが、それが今まで聞きたくてたまらなかったシヴァに火をつけたような形になった。
「誰なの? さっきの人。ルシファーって言ったよね? それって、かなりの大企業の社長さんなんじゃなかった? そんな人が何故、ユダと知り合いなの?」
畳み掛けるようなシヴァの質問に、思わずゴウと目を合わせ、ふたり同時なタイミングで首を竦めていた。
「これは、ちゃんと話してやった方が、抉れずにすみそうだぞ?」
少し面白がっているかのようなゴウの瞳に、苦笑するしかなかった。
「じゃあ、おまえも手伝え」
「おれもか?」
「乗りかかった船だ。一緒に頼むよ」
ちらりと見たシヴァの顔は、疑問でいっぱいで、たまらないような表情だった。
ゴウも、切羽詰ったようなシヴァの顔を見て、諦めたようにため息をついていた。
「やれやれ。わかったよ。じゃあ、とりあえず、ユダ。おまえの部屋に行くとしよう」
「おれのか?」
「当たり前だ。おれのとこは、まだガイが寝てる」
そうだった。
ゴウはガイとの相部屋だったんだった。
「そうか。わかった」
諦めたように、そう言うしかなかった。
シヴァはユダの部屋に入れる嬉しさと、何かわけのわからないものの正体が明かされる期待感と、そして、なぜか感じる恐怖感がない交ぜになっているような気がしていた。
ドキドキ感は否が応でも増してくる。
ヘンなことだったら……どうしよう?
怖いことだったりしたら……どうしよう?
数分後、ユダの部屋から短く響く声……。
それは絶叫となる前に、ゴウの手で塞がれたもの。
「こらっ! そんな大声出すやつがあるか!?」
「ご、ごめん……」
「まったく……そんなに驚くことでもないだろ?」
「そう、かな? 少なくとも、ボクは驚いたよ」
「まぁ……知らない人が多いだろうしな。おれだって、この仕事についていなきゃ、知り合うこともなかっただろうって思うよ」
「そ、そうなんだ?」
「本当に、たまたま。運命の悪戯――みたいなものさ」
「ふ、ふーん」
「納得行かないか?」
「あ、いや。そうじゃないんだけど」
「だけど?」
「うん。パンドラがなんであんなに怖がったのかなぁって……」
「パンドラが?」
ユダとゴウが同時に声を上げ、お互いを見つめて首を傾げる。
「なにかあったのか?」
「さあ? 聞いてはいないけどな。大方噂に踊らされている一人かもしれないぞ?」
「まぁ、それは否めないな」
「あいつは……聞いても答えないような気がするしな……」
「そう、だな……」
「……パールなら、なんか知ってるかも?」
「どうだろうな? パールと一緒にいるようになる前の話かもしれないしな」
「それは有り得そうだな……。まあ、聞いてみて損はないかもしれないな」
「しかし、パールはいつもパンドラの肩の上。いったいどうやる?」
ふたりでそんな相談をしていると、シヴァが提案とばかりに話し出した。
「パールに話を聞くだけなら、ボクでも出来るかもしれないよ?」
「そうか……じゃあ頼んだ方が早いかもしれないな」
このまま机上の空論を戦わせておくよりも、よっぽど実のなる行為だと思い、任せる事にした。
「うん。まかせておいて」
嬉々として言うシヴァの顔には、ユダの役に立てるという嬉しさでいっぱいだった。
本当にわかりやすいヤツだ……ゴウは内心ため息をついていた。
さて、シヴァがどうするつもりなのか――見るともなしにふたりが物陰から見ていると……。
まだ寝ぼけているパンドラを尻目にパールを捕まえ、返事も出来ないのをいいことに「ちょっと借りるね」と言って連れ出してきた――と言うわけだ。
「まぁ、外れているわけじゃあないが……」
ため息混じりに言うゴウに、同調するようにユダが言う。
「それは拉致と言うものではないのか?」
やれやれといった感じになるユダとゴウ。
けれど、当のシヴァは、したり顔で褒めてもらいたさそうにしている。
どこをどうすれば、これが褒められる行為だというのだろうか。
時々、シヴァの意図や考えがわからないときがある。
本人には本人のなにかこちらには解り得ぬ基準と言うものがあるのだろう。
例え、それが一般的に受け入れられるようなものでなくとも、シヴァはきっとそれを通すのだろうと思う。
今までも、そうだったから。
一般的と違うからといって無理に合わせようなどと言う気は、さらさらなさそうだ。
そして……被害者とも言えるパールは、怯えた顔で三人の顔を交互に見ている。
「あ……あのぉ……。どうしてこんな所につれてこられたんでしょう?」
ひとつため息をついて、ゴウが切り出した。
「すまんな。こうなったら単刀直入に聞くぞ。パンドラがルシファーに怯えている理由、おまえは知っているか?」
「ルシファー? 誰です? それ……」
首を傾げるしかないパール。
さすがに、名前までは知らなかったとみえる。
「ほら、夜のなんとかって言われている人だって、パンドラが言ってたじゃないか」
「あぁ……。まぁ、パンドラはあまり夜に良い思い出がないので、その支配者と言われている人――と言うだけで怯えてしまうんじゃないでしょうかね? そう思うんですが……」
その口振りからするに、パール自体も、詳しくは知らなさそうだった。
「そうか」
「な? 言ったとおりだろ?」
「ルシファーのことなら、心配要らない。おれの社長だってパンドラに言っておいてくれ」
「ユダ殿の? そうだったんですか……」
「詳しい話を聞きたいのなら、おれの部屋にこいとな」
「あぁ、なんだったらおれの部屋でも良いぞ?」
にやりと笑いながら、ゴウが添える。
「解りました。そうパンドラに伝えておきます。お話は、これだけですか?」
「ん〜、まぁ、そう、だな?」
「そうだな」
「では、失礼します。シヴァ、ちゃんと戻してくださいよ」
「わ、わかったよ。じゃあ、ユダ。またね」
「あぁ、手を煩わせたな」
「どうってことないよ」
「こっちはいい迷惑だけどね……」
「なんか言った?」
「別に。なんでもないです。それより早く戻してください。パンドラが心配します」
「わかってるよ」
シヴァの姿が見えなくなって、ユダとゴウはお互いの顔を見合わせて肩を竦めた。
「ま、あのことは伝えなくても、いいよな?」
「あぁ。伝えるべきことじゃあないだろう。おれたちが知っておけば、それでいい……」
「だな……。知る時期がくれば、否が応でも知る事になるかもしれないけどな」
「しかし、今はその時期ではないだろう?」
「そりゃあ、そうだ」
大きく頷いて、何かを思い出したような顔をする。
「そう言えば、いい加減眠いんじゃないのか? 徹夜明けでこんなことされて……」
「あぁ。確かに。まぁ、タイミングが悪かったと言うべきだろう。今日は休みだから、ゆっくり寝させてもらうさ」
「そうか。まぁ、誰も近づかないように、みんなに言っとくよ。やっぱり、パンドラはおれの部屋に呼ぶことにするか」
「今晩帰ってきたら、話をすることにすれば良いんじゃないのか? おまえはいないがおれはいる」
「いいのか? それで」
「別に嘘で塗り固めることを言うわけではないし。本当の事を言うだけだから大丈夫だろう」
「ユダがそれでいいなら、おれは構わないが……」
「どうした? 心配か? そんなにおれが」
言うなり、くすりと笑う。
「あ、いや……。まぁ、ちょっとな」
頭をかきながら、少し照れくさそうに言った。
「相変わらず正直なやつだ。いざとなったら、コンビニに駆け込むさ」
「ははは。そんな暇があれば――の話だけどな」
「手厳しい事を言うな、ゴウは」
「どのみち、あいつらが仕事に行く前だと、おまえはまだ寝ているだろう? 起きたときには仕事に行っている。あいつらが帰ってきた頃は、多分おれが仕事に行ってる……」
「そう、だな……」
「ま、おまえが起きているのが一番早いんだろうが……」
「……それは、多分、無理だ」
「だろうな」
苦笑いをしながらゴウが言う。
「ま、パンドラしだいだな。今目が覚めれば、一番良いのだろうが……」
「多分、無理だな。朝は弱いようなこと言っていたからな」
「だな」
「ま、それは臨機応変に行くしかないだろう」
「あぁ。もしおまえに任せることになったら、後は頼む」
「おぅ。任されとけ」
笑いながら言う友の顔に頼もしさを見つけたユダは、つられるように微笑んでいた。
気兼ねなくいえる友――そんな友人が近くにいることは、安心できる。
唯一無二の親友は、随分と前から住み込みで働いているから、そうは会えなくなっていた。
しかし、彼は――いや、彼らは、そんな自分の心の支えとなっている。
いろいろなことはあるけれど、楽しい日々だ。
ふっと、遠い昔の記憶が脳裏を掠めた気がした。
けれどそれは、あまりにも儚い、それこそ夢にも似たもの。
掠めたことさえ忘れてしまう……。
ふと、窓の外を見上げた。
青空に輝く太陽が、光の輪の様に降り注いでいるように見えた。
黄金の大きな羽根を持つ天使が、笑顔で天へと還っていく――そんな錯覚をユダは見た気がした……。
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